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久坂部羊《無痛》と刑法39条 

昨日に引き続き、医者文学シリーズその2。

《無痛》久坂部羊

文庫本の帯に「外見だけで症状が完璧にわかる驚異の医師が犯人を追いつめる!」と書かれていたので、当然そういう小説かと思って読み始めたら、なんだかテーマが違う気がする。
確かにそうしう「驚異の医師」は登場するが、メインテーマは刑法39条に集約される。
刑法39条と言ってピンと来なくても、「心神喪失者の不処罰および心神耗弱者の刑の減軽」について定められた法律、と言えばあれか、と思うだろう。

刑法39条 
1 心神薄弱者ノ行為ハコレヲ罰セズ   
2 心神耗弱者ノ行為ハソノ刑ヲ減刑ス

わたしがこの本を買ったのは折しも日本では「千葉・女児死体遺棄事件」通称「幸満ちゃん殺害事件」が話題になっていたときだった。
その時にはこの本のサブテーマを知らなかったし、この本自体は2006年4月にハードカバーで出版されているものなので、この事件に触発されて書かれたものではない。
しかしながら、非常にタイムリーな内容で、読みながら何度も深く考えさせられた。

映画《デスノート》もコミックで描かれているがテーマは刑法39条への疑問だ。
同じ意味で考えさせられるのが刑法41条。

刑法41条
14歳ニ満タナイ者ノ行為ハ、罰シナイ。

先日読んだ東野圭吾の《さまよう刃》は最愛の娘が未成年者に陵辱され殺された父親が、刑法41条の適用を恐れ、独自で犯人を追いつめるストーリーである。
実際に日本でも14歳以下の子供の残虐な事件は増えており、「刑法41条」のキーワードで検索をかければ、それに疑問を持つ人たちのサイトがいくらでも出てくる。

《無痛》には刑法41条の問題も多少出てくるが、大きなテーマはやはり39条のほうだ。

文中にこんな記述があり、非常に驚いた。

この法律で不起訴になった精神障害者は、二〇〇三年だけで六百四人。そのうち七十四人が殺人を犯していた。
日本のどこかで毎月六人が精神障害者に殺されている計算だ。この数字はここ数年変わっていない。

刑法39条は、先天性の精神障害者のみならず、泥酔者・覚醒剤使用者にも適応される。
39条が議論される背景には、「泥酔者・覚醒剤使用者にも適応」という部分も大きいと思われる。
わたしのような法律素人から見ても、精神障害者はまだしも、泥酔者・覚醒剤使用者に適用とは寛大すぎると思う。
特に覚醒剤に至っては、使用そのものが法律を犯している上に、殺人まで犯したら二重に犯罪のはずが、マイナス×マイナスはプラスの法則が働くのか、正常な状態の人より厚遇されてしまうではないか。これって、やっぱりおかしい。

比較的最近(2001年)では大阪教育大学教育学部附属池田小学校児童無差別殺傷事件の犯人が、過去に15回も様々な犯罪に手を染めていたが、この刑法39条を悪用し精神障害者を装い、精神科通院歴を楯に不起訴処分(あるいは保護観察処分)という比較的軽い処分を経験したという事実が刑法39条見直し論に火をつけたように思う。(ちなみに、この犯人は御存じのように2004年9月に死刑執行されている。)

昨年9月に起きた幸満ちゃん殺害事件に関しては、メディアの介入により、この問題をさらに複雑化させている。

幸満ちゃん殺害事件の裏にTBSのモラルなき蛮行

 昨年12月、千葉県東金市の成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(5歳)を殺害したとして勝木諒容疑者(21歳)が逮捕された。だが、勝木容疑者が知的障害者であったため、全国の特別支援学校などから「いわれなき偏見を生んでいる」と訴えが続くなど、やり切れない状況になっている。
そんななか、「事件をめぐる一部の報道こそ、捜査をかく乱し、差別も助長した」という指摘が警察、弁護側双方から噴き出してきた。(詳細はニュースサイト参照

本筋とは逸れるが、刑法39条が心神喪失者の不処罰および心神耗弱者の刑の減軽について定められた法律、刑法41条が14歳以下の未成年の刑の軽減について定められた法律だとすると、間の刑法40条は何?と気になって調べてみた。

刑法40条
削除

削除されている。
何を定めた法律だったのだろう。
さらに調べてみた。

旧刑法40条
いん唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス

(*いん唖者とは、聴覚機能を失っているために言語機能が発達しなかった者をいいます。聾唖(いんあ)教育の発達していない時代には、いん唖者は聴覚機能・言語機能をともに欠くため、精神的に未発達なのが通常でした。そのため、いん唖者の行為は罰しない、あるいは刑を減刑することにしていたのです。ところが、聾唖教育の発達した現代においては、いん唖者も精神を充分に発育させることが可能になりましたので、いん唖者に対する特別扱いを止めることにしたのです。)
http://www.soyokaze-law.jp/75-3.htm

法律に暗くてお恥ずかしいが、刑法40条が削除されたのは1995年。
たった14年前のことだったとは知らなかった。
このときに、いん唖者に対する特別扱いを止めるのであれば、39条の精神障害者への特別扱いも止めるべきだ、つまり、「法で罰せられる権利」を与えるべきだ、という議論もあったらしいが、結局40条は削除され、39条は残ったらしい。
(言い訳をすると、わたしは95年~97年は北京に留学中で、ネットもなく、日本のメディアに全く触れていなかった空白の2年間なので、この時期に起きた出来事は殆ど知らないのだ・・・。)

わたしの浅い知識ではこんな大きなテーマについて意見を言うことなどできないが、《無痛》では、刑法39条への疑問とともに、精神障害者を抱える家族の視点からの現実も併せて描かれており、このテーマについて本当に考えさせられる。

プラス、タイトルにもなっている「無痛」。
これはネタバレになってしまうが、先に知っていても邪魔にならない内容なので書いてしまうと、痛覚が無いという障害を持った人物が登場する。
痛覚が欠如しているという症例は実際にあるようで、以前TVでそういう子供を見たことがある。
痛覚が無いということは、骨が折れても、手がもげても痛みを感じないので、手をぶらぶらさせたまま遊んでしまう、非常に危ない症例だとTVでは紹介されていた。
《無痛》では、この痛覚についても書かれており興味深い。

この小説、盛り込みすぎなぐらい盛り込んでいて、大変面白い。

個人的には刑法39条に非常に興味をもったので、経緯(特に泥酔者や覚醒剤使用者も含まれている経緯)などが書かれた本を読んでみようかと思っている。
(お勧め本があったら教えてください。《刑法39条》という映画もあるらしい。)

【参考URL】

刑法 
http://www.houko.com/00/01/M40/045.HTM

刑法39条関連事件
http://yabusaka.moo.jp/keihou.htm

責任能力
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E7%A5%9E%E8%80%97%E5%BC%B1

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